グリコ森永事件の犯人像&真相とは?産廃業者説やロッテ説ほか
昭和の未解決事件と言ったら、私の脳裏にすぐ蘇るのは【グリコ・森永事件】(1984〜1985年)ですね。
若い世代の皆さんからすれば「なに?江崎グリコと森永製菓がお菓子の商標をめぐって“全面対決”でもしたの⁈」とか思うかもしれませんが…。
そうではなく、実は恐ろしい事件だったんです。なんせ「かい人21面相」を名乗る不審者が、スーパーに並んでるお菓子に毒物を入れるぞ!とグリコや森永を脅し、多額の現金を要求したんですから。
当時、私も子供ながらに事件の行方が気になり、ニュースを観ていた記憶がありますよ。一時、スーパーのお菓子を買うのを躊躇いましたもんね。
今回は、そんなグリコ・森永事件の犯人像や真相について整理してみたいと思った次第です。
目 次
グリコ森永事件とは?あらましを簡単に
繰り返しになりますが、グリコ森永事件は未解決事件であり、2000年2月13日に時効を迎えました。どんな事件だったか簡単に振り返ります。
●1984年3月18日、江崎グリコ社長の江崎勝久さん宅に3人組の男が侵入。江崎社長が誘拐された
●犯人たちは身代金として現金10億円と金100kgをグリコに要求
●3月21日、江崎社長は、監禁されていた淀川沿いの水防倉庫から自力で脱出
●今度は、犯人たちが「グリコ製品に青酸ソーダを混入する」と脅迫。社屋への放火なども行ってきたが、現金奪取には失敗
●犯人たちはグリコから標的を変え、森永、丸大、日本ハム、ハウス食品なども脅迫。大阪や兵庫や愛知などのスーパーに青酸入り菓子が置かれる事案が続いた
●毒入り菓子を食べたことによる人的被害はなかった。現金を奪われる被害もなかった
そして犯人たちはマスコミにも挑戦状を送りつけ、煽りに煽ります。NHKに対しては、こんな文面を貼り付けた森永商品を送ってきたのです。
どくいり きけん
たべたら 死ぬで
かい人21面相
↓この“キツネ目の男”の似顔絵は有名ですよね。何度か目撃されたという犯行グループの一員です。
それにしても、なんと大胆な犯行でしょうか。80年代という時代背景も映し出してる気がします。
誘拐された江崎社長、無事で良かったですね。大企業のトップともなれば有名人ですから、邪魔しようとする輩が多いのかもしれません。
自力で水防倉庫から脱出できたのは奇跡でしょう。誘拐中、江崎社長と犯人たちとで言葉のやり取りがあったのか、どんな扱いを受けたのか、個人的にはその詳細が気になります。
警察も挑発した犯人グループ!“対決”の結末は…
「かい人21面相」と名乗る犯人たちの尻尾をつかもうと警察も必死です。
そこで警察は、脅迫を受けたハウス食品の現金輸送車を“おとり”に、一斉検挙を狙う作戦を決行したのです。しかし…
その作戦を知らされていなかった滋賀県警のパトカーが、犯人とみられる不審者を取り逃すという痛恨のミスをしてしまいました!
実は警察は、これ以外にもミスを連発していたそう。警察の組織力は高いと信じていましたが、その包囲網をくぐり抜けてミスを誘うという犯人たちの方が一枚上手だったわけです。
犯人たちは警察をあざ笑います。以下、マスコミ宛に送った挑戦状の抜粋です。
わしら ポリ公と あいさつ しとんねん (中略) 警察の車5だいか6だい はしっとったで タクシーにのった あほも おった (中略) 会社の車に のって 1人で くるよう ゆったのに ちがう車で 2人も すわって まっとった きいとるだけで あほらしいやろ
そして、不審者を取り逃した滋賀県警関係でショッキングな事件が起こります。
当時、県警本部長を務めていた山本昌ニさんが、定年退職したその日に焼身自殺したのです。遺書はなかったものの、犯人を逃してしまった責任を取ったとみられています。
山本さんの無念さが伝わってきますね。
これは犯人たちも意図しなかった事件だったのでしょう。ここで“犯行の終息宣言”をします。
山もと 男らしうに 死によった さかいに わしら こおでん やることに した くいもんの 会社 いびるの もお やめや このあと きょおはく するもん にせもんや
それでも警察の執念の捜査は続き、ある手がかりにたどり着きます。
グリコ森永事件の犯人像とは?
グリコ森永事件では、実に多くの犯人像が予想されました。中でも有力視されたのが次の説です。
①暴力団組織
②元・北朝鮮工作員
③産廃業者
④組織的犯罪グループ
⑤怨恨を持つ者
「産廃業者」というワードが突飛な感じがしますが、その理由について触れたいと思います。
“終息宣言”から7年後の1992年3月、捜査本部は、犯人が乗り捨てた盗難車から微量の金属物質を採取。そこから、とある産廃業者にたどり着いたからなのです。
さらにその線から怪しい人物を洗い出していくと、山口組系の元組長・Kと、富山市在住の元・北朝鮮工作員(50代の男)が浮上。
元・工作員に限っては、江崎社長誘拐事件が起こる6年前にグリコ役員宅に届いた“脅迫カセットテープ”の音声と声が似ていました。
そう、グリコ森永事件以前の1978年にも「脅迫テープ騒動」が起きていたのです。テープには次のような趣旨の話が収録されていました。
~私は過激派の連中と付き合うようになり、その連中がどうしても資金が欲しいと言う。
そこでグリコさんにカンパしてほしいが、もし断ったり警察に言ったならば、それなりの報復を計画しているそうです。
グリコ製品に毒物を入れて12都道府県にばら撒く…~
この音声と元・工作員の声が酷似していたそうですが、声紋鑑定の結果は「不一致」。産廃業者〜K〜元・工作員を犯行グループとにらんでいた警察の捜査方針は、ことごとく揺らいでしまいました。
決定的な証拠がない限り、何もできません。強制捜査をかけてもK本人は「知らない」の一点張り。任意同行を求めた他の関係者も、みな事件への関与を否定しました。
グリコ森永事件の真相とは?ロッテも怪しい?!~まとめ~
私の想像では、上記の説でいう④の組織的犯罪グループが実行犯で、黒幕に①の暴力団組織がいるという図式かと予測します。
目的は「金銭のみ」で、⑤の怨恨者の線はないのではないかと考えます。グリコや江崎社長への恨みが発端なら、江崎社長を水防倉庫に閉じ込めて放置はしないと思いますし、他の企業にも手当たり次第の脅迫はしないでしょう。
何より、犯人たちが送った手紙の文面からは、怨恨をまったく感じませんでした(私の印象です)。
現金奪取には失敗している犯行グループですが、その結束力・連係プレーは大したものです。プロの手口です。現在の特殊詐欺グループのように、メンバーそれぞれに細かな役回りが与えられていたのでしょうか。
そこに警察のミスも重なり、犯人たちを調子づかせた面もありますね。
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そういえば、犯人像に関連して「脅迫や被害が全然なかったロッテが怪しい!」という意見も出ましたね。ロッテ創業者が韓国人であったことから、その筋を疑う声もあり…。
でも、これはどうなんでしょうね?
仮にゆかりある韓国人が犯人だとして「ロッテを巻き込みたくない」と思ったとしても、毒入り菓子をばらまくと表明すれば、菓子を購入するお客は全体期的に減るでしょう。グリコだけでなく菓子メーカー全体の業績にマイナスに働くことは容易に想像できるからです。
現に1985年にはグリコ森永事件の模倣犯が現れ、ロッテが狙われました。やはり「ロッテ付近が怪しい」説には無理があるように感じます。
…とはいえ、時効となったグリコ森永事件の真相は闇の中です。今でも関心が尽きない事件であることは間違いありませんね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。